肩こりが長く続いていると、自分なりの「いつもの範囲」ができてきます。
仕事が忙しいと、ここが張る。
パソコンが続くと、首まで重くなる。
疲れてくると、頭まで重たい。
「まあ、いつもの肩こりだな」
そうやって身体の状態に名前をつけることは、日常を過ごしていくうえでは自然なことだと思います。
大切なのは、その「いつもの肩こり」に、今までなかった変化が加わっていないかを見ることです。
いつもの肩こりとして過ごしてよいのか。
一度、医療機関へ相談した方がよいのか。
それとも、救急対応を考えた方がよいのか。
その判断を切り替える目安を、順番に見ていきます。
「肩こりがひどくなっただけ」と思わない方がいい変化
たとえば、普段から首や肩がこる人でも、
今までにない強い頭痛や首の痛みが急に出て、さらに顔や手足のしびれ・力の入りにくさ、ろれつの回りにくさ、見え方の異常、立っていられないほどのふらつきなどが加わった。
こうなると、
「今日は肩こりがひどいな」
という範囲で様子を見る場面ではありません。
同じように、肩や背中が普段から張りやすい人でも、
そこに胸の圧迫感や強い胸痛、急な息苦しさ、冷汗などが加わった
という場合には、肩や背中の筋肉の問題だけとは考えず、救急対応を考えます。
緊急性が高いと感じる場合は119番へ。
「救急車を呼ぶほどなのか判断がつかない」という場合には、埼玉県の救急電話相談 #7119を利用する方法もあります。
急ではなくても、「いつもと違う」が続くとき
救急というほど急ではなくても、一度医療機関へ相談した方がよい変化もあります。
たとえば、
- 前から肩はこるけれど、最近は手や腕のしびれが続くようになった
- 以前より力が入りにくい
- 物を落とすことが増えた
- ボタンや箸、字を書くことが以前よりやりにくい
- 歩いていると足がもつれる、バランスが悪くなったように感じる
- 発熱や強いだるさを伴っている
- 痛みが明らかにいつもと違い、だんだん悪くなっている
といった変化です。
こうした症状があるからといって、特定の病気だと決まるわけではありません。
大切なのは、これまでなかった変化が加わり、それが続いている、あるいは進んでいることです。
急に起きた、急速に悪くなっている場合には救急対応を考える。
急ではなくても、新しい症状が続いているなら、肩こりだけの問題と決めつけず、一度医療機関へ相談してください。
参考:日本整形外科学会「しびれ(上肢のしびれ)」/「頚椎症性脊髄症」
一つの症状だけで「危険」と決める必要もありません
ただ、ここまでの話を読むと、
「頭痛があるから危ないのかな」
「めまいがあるから病院へ行った方がいいのかな」
と不安になる方もいるかもしれません。
頭痛がある。
めまいがある。
片側だけ痛い。
夜に痛む。
こうした一つの症状だけを取り出して、
「危険な肩こりかもしれない」
と考える必要はありません。
見たいのは、
今までと何が違うのか。
急に起きたのか。
続いているのか。
悪くなっているのか。
ほかにどんな変化が加わっているのか。
ということです。
症状の組み合わせだけで病名を決めることもできません。
気になる変化があるときには、自分で病名を当てようとするより、一度医療機関で相談する方がよいと思います。
いつもの肩こりなら、できることもあります
いつもの肩こりで、
急に始まったわけではない。
新しいしびれや力の入りにくさもない。
発熱や強い全身症状もない。
胸の症状もない。
日常生活もおおむねいつもどおりできている。
そんな場合には、無理のない範囲で少し身体を動かしたり、同じ姿勢を続けすぎないようにしたり、心地よければ温めたりしながら、その後の変化をみるという選択肢があります。
身体の状態は、その後も変わります。
新しい症状が加わった。
いつもより明らかに悪くなった。
なかなか改善する方向へ向かわない。
そんなときには、そこでまた見直します。
昨日と今日で、身体はまったく同じではありません。
参考:日本整形外科学会「肩こり」/Clinical Practice Guideline: Nonspecific Neck Pain
「肩こり」という名前に、全部入れてしまわない
私たちは、身体の状態に名前をつけながら生活しています。
「これは肩こり」
「これはいつもの頭痛」
「今日は疲れているだけ」
そうやって整理すること自体は、悪いことではありません。
ただ、一度つけた名前に、その後の身体まで合わせ続ける必要はないと思っています。
いつもの肩こりの中に、これまでなかった変化が混ざってきたとき。
その変化まで、
「これも肩こりだから」
と同じ箱の中へ押し込めない。
一度、自分が持っていた身体の見方を更新する。
大切なのは、病気の名前をたくさん覚えることではありません。
「いつもと違う」という感覚だけで、何かの病気だと決まるわけでもありません。
でも、身体をもう一度見直すきっかけにはなります。
急な大きな変化なら、救急対応を。
新しい変化が続くなら、医療機関へ。
いつもの範囲なら、無理のないセルフケアを。
大切なのは、一度決めた「これは肩こり」という見方に、身体を合わせ続けないことです。


