めまいのあと、首や肩までつらくなる
めまいがある方のなかには、ふらつきだけでなく、首や肩の重さ、こわばり、疲れやすさを一緒に感じる方がいます。すると、「肩こりがめまいの原因なのだろうか」と考えることもあるかもしれません。
けれども、首肩だけを切り離して見ると、身体で起きていることを捉えにくい場合があります。めまいがあるときには、頭や視線を安定させようとして、使う感覚や身体の動かし方が変わることがあるからです。
この記事では、めまいのあとに首や肩がつらくなる背景を、身体が安定を保とうとする仕組みから考えます。
身体のバランスは、耳だけで保たれていない
身体のバランスは、内耳にある前庭だけで保たれているわけではありません。私たちは、前庭、視覚、体性感覚から入る情報を組み合わせながら、頭や身体の位置と動きを把握しています(Peterka, 2002;Lacour et al., 2016)。体性感覚とは、筋肉や関節、足の裏などから入る身体の感覚です。
暗い場所では視覚から得られる手がかりが少なくなり、揺れる場所では足元からの情報が不安定になります。そのとき身体は、状況に応じて利用する感覚の割合を変えます。これは「感覚再重み付け」と呼ばれる考え方です。
つまり、バランスは一つのセンサーの働きだけで決まるのではなく、複数の感覚をその場に合わせて組み合わせることで保たれています。
めまいのあと、身体は別の方法で安定しようとする
前庭の働きが変化したあとには、視覚や身体からの感覚を利用しながら、姿勢や動作を保とうとする適応が起こります(Lacour et al., 2015;Lacour et al., 2016)。こうした調整は、前庭代償の一側面です。
適応は感覚の使い方だけではありません。頭をゆっくり動かす、動作を慎重にする、支持物の近くを歩くなど、身体の使い方が変わることもあります。
首から入る感覚も、頭の位置を知る手がかりになる
首の筋肉や関節から入る感覚は、頭の位置や動きを把握する手がかりになります(Sung, 2022)。特に上位頸部や後頭下筋群には、頭の細かな位置変化を捉える固有感覚の働きがあります。
首は、頭を支えるための場所であると同時に、頭がどちらを向き、どのように動いているかを知る手がかりを送る場所でもあります。めまいと首肩こりを考えるとき、首の筋肉の硬さだけでなく、この感覚の役割も視野に入れることが大切です。
頭や視線を安定させようとして、首肩へ力が入ることがある
臨床では、揺れや不安定さを感じている方から、次のような身体の使い方を聞くことがあります。
- 頭を動かさないようにする
- 正面を向いたまま歩く
- 視線を一点に保とうとする
- 肩を上げる
- 身体全体を固める
こうした使い方が続いたあとに、首肩の重さや疲れを感じる方もいます。
めまいがあるときに何を安定させようとしていたのか、そのためにどのような動き方を選んでいたのかを見ると、首肩のつらさが生じる場面を理解しやすくなります。
肩こりだけを切り離さず、起こる場面を見る
首肩がつらいときは、こっている場所だけでなく、つらさが強くなる場面を振り返ることが手がかりになります。たとえば、歩いているとき、振り向くとき、人の多い場所にいるとき、画面を見続けたあとなどです。
同じ首肩こりでも、頭を動かすことへの不安が強いのか、視線を固定し続けているのか、足元の不安定さに身体全体で対応しているのかで、重なっている身体の使い方は異なることがあります。
日常場面の振り返りや、首肩へ力が入るタイミングについては、めまいと肩こりが一緒にあるとき|首や肩の「がんばり」をどう見るかでも詳しく紹介しています。
画面作業でつらくなる場合は、視覚の使い方も関係する
めまいのあと、画面を見ているとふらつきや疲れが強くなる方もいます。前庭神経炎後に症状が続く方では、視覚情報への依存が強い場合があることが報告されています(Cousins et al., 2014)。
画面作業と視覚依存、頭のもや感については、パソコン作業でふらつきや頭のもや感が強くなる理由で扱っています。ここでは、首肩の緊張だけでなく、視覚の使い方が重なっている場合もある、という点に留めます。
Yejiでは、緊張が何を支えているのかを見る
Yejiでは、首や肩の緊張を見つけたとき、その硬さだけを切り離して考えません。どの場面で力が入り、頭や視線、身体の安定のうち何を支えているのかを一緒に見ていきます。
緊張には、その時点で頭や身体を支え、動きを続けるための役割が重なっていることがあります。身体の使い方を丁寧にたどることで、「なぜそこへ力が入っているのか」を理解する手がかりになります。
まとめ
身体のバランスは、前庭、視覚、体性感覚を組み合わせて保たれています。前庭の働きが変化したあとには、利用する感覚や身体の動かし方を調整しながら、姿勢や動作を保とうとします。
その過程で、頭や視線を安定させようとして首肩へ力が入り、あとから重さや疲れを感じる方もいます。首肩の緊張を単なる筋肉の硬さとして見るだけでなく、「その緊張が何を支えているのか」という視点を持つと、めまいのある身体の反応を理解しやすくなります。
めまいに関する記事案内
めまいに関する記事全体の案内は、めまいについて|Yeji浦和の考え方と記事一覧をご覧ください。
来院を検討されている方へ
めまいと首肩のつらさが重なっているときは、こっている場所だけでなく、症状が現れる場面や、頭・視線・身体の使い方を一緒に確認すると、状態を整理しやすくなることがあります。
Yeji浦和では、首肩の硬さだけで判断せず、ふらつきが出る場面や身体の使い方を確認しながら、施術方針を考えています。
安全案内
※本記事は一般的な身体の仕組みについて説明するもので、特定の診断や治療、予後を示すものではありません。症状が続く場合や急な変化がある場合は、医療機関へご相談ください。
References
- Peterka RJ. Sensorimotor integration in human postural control. Journal of Neurophysiology. 2002.
- Lacour M, et al. Interaction between vestibular compensation mechanisms and vestibular rehabilitation therapy: 10 recommendations for optimal functional recovery. Frontiers in Neurology. 2015.
- Lacour M, et al. Vestibular compensation: the neuro-otologist’s best friend. Journal of Neurology. 2016.
- Sung YH. Suboccipital Muscles, Forward Head Posture, and Cervicogenic Dizziness. Medicina. 2022.
- Cousins S, et al. Visual Dependency and Dizziness after Vestibular Neuritis. PLOS ONE. 2014.


