めまいがある方のなかには、
・首や肩がこる
・頭がぼんやりする
・ふらつく感じが続く
・パソコン作業がつらくなる
といった症状を同時に感じる方が少なくありません。
こうした状態があるとき、
「肩こりが原因なのではないか」と考えることもあるかもしれません。
しかし実際には、首や肩の緊張は単なる筋肉の問題ではなく、
身体がバランスを取ろうとしている結果として起きていることもあります。
ここでは少し専門的な視点から、
前庭代償(ぜんていだいしょう)
という仕組みを手がかりに、
めまいと首肩の緊張がどのようにつながるのかを説明します。
人間のバランスは「耳」だけで作られているわけではありません
めまいというと
「内耳の問題」というイメージを持たれることが多いかもしれません。
確かに、内耳にある前庭という器官は
身体のバランスにとって重要な役割を持っています。
ただし、人間のバランスは
ひとつの器官だけで作られているわけではありません。
主に次の3つの情報が統合されることで
身体の位置や動きが認識されています。
・内耳(前庭)
・視覚
・体性感覚(筋肉や関節の感覚)
これらの情報を脳が統合することで、
「自分の頭や身体がどこにあるのか」という空間認識が成り立っています
(Peterka. 2002, Lacour et al. 2015)。
前庭機能が低下すると身体はどうするのか
もし内耳の前庭機能が弱くなると、
身体はどうするのでしょうか。
このとき脳は、
他の感覚を使ってバランスを補おうとします。
この仕組みを
前庭代償
と呼びます。
前庭代償が働くと、
身体は次のような感覚への依存を強めることがあります。
・視覚
・首の感覚
・足の感覚
つまり、耳の情報が少し不安定になったとき、
身体は別のセンサーを使ってバランスを保とうとするのです
(Lacour, et al. 2016)。
これは身体にとって
とても自然な適応反応といえます。
首や顎の筋肉が働きやすくなる理由
前庭代償のなかで特に重要になるのが
頸部の固有感覚
です。
首には、頭の位置や動きを感知する
多くの感覚受容器が存在しています。
とくに上位頸椎周囲の筋肉(後頭下筋群など)は、
頭の位置を細かく感じ取るセンサーのような役割を持っています
(Sung. 2022)。
そのため、前庭機能が弱くなると、
・後頭下筋
・胸鎖乳突筋
・咬筋
・側頭筋
などが働きやすくなることがあります。
これは身体が
「頭の位置をより正確に感じ取ろう」としている結果とも考えられます。
ただ、その状態が続くと
・首こり
・肩こり
・頭の重さ
として感じられることがあります。
「頭が働かない」「もやもやする」感覚
めまいのある方から
・頭が働かない
・集中できない
・もやもやする
といった感覚を聞くことがあります。
このような状態は
単なる疲れとは少し違う可能性もあります。
身体のバランスを保つために
脳が多くの情報を処理している状態では、
情報処理の負荷が高くなる
ことがあります。
その結果として
「頭がすっきりしない」と感じることもあるのです
(Wittenberg et al. 2017)。
パソコン作業でつらくなる理由
めまいのある方のなかには
「パソコンを見ているとふらつく」
「画面を見ると頭がぼんやりする」
という状態を感じる方もいます。
これは、前庭代償によって
視覚への依存が強くなっている可能性があります。
視覚はとても強い感覚情報です。
そのため、視覚への依存が高まると
長時間の画面作業が負担になることがあります
(Cousins et al. 2014)。
このテーマについては、
「パソコンでふらつきや頭のもや感が強くなる理由」の記事でも詳しく説明しています。
めまいと三叉神経の関係
もう一つ、めまいと関係する可能性がある神経として
三叉神経があります。
三叉神経は顔や頭の感覚を伝える神経ですが、
同時に
・顎
・顔面
・こめかみ
・頭部
などの感覚とも深く関係しています。
三叉神経の神経核は脳幹にあり、
頸部や後頭部の感覚と重なり合う
trigemino-cervical complex と呼ばれる領域で
情報が統合されると考えられています
(Mehnert et al. 2023)。
そのため、
・顎の緊張
・食いしばり
・側頭部の緊張
などが、頭の感覚や不快感として
感じられることもあります。
めまいのある方で
・顎の疲れ
・こめかみの張り
・頭の重さ
などを感じる場合には、
このような感覚のつながりが
関係している可能性も考えられます。
肩こりは原因ではなく「結果」のこともある
このような身体の状態では、
肩こりは
原因ではなく結果
として起きていることがあります。
身体は倒れないように
バランスを保とうとして
首や肩の筋肉を使っているのです。
そのため、
「肩をほぐせば治る」
という単純な構造ではない場合もあります。
めまいと首肩こりの関係については、
「めまいがある人の肩こりは、なぜ起こるのか」の記事でも詳しく解説しています。
「こりを取る」だけでは整わないこともある
首や肩の緊張が
身体のバランスを保つ働きの一部である場合、
単純に筋肉をゆるめるだけでは
うまく整わないこともあります。
身体の状態を考えるときには
・姿勢
・呼吸
・体幹の安定
・足の感覚
なども含めて
全体のバランスを見ることが大切になることがあります。
身体は壊れているのではなく「適応している」
めまいと首肩こりが同時に起きているとき、
身体は壊れているというよりも
バランスを保とうとして働いている状態
であることがあります。
身体の緊張は
必ずしも悪いものではありません。
多くの場合、
身体が安定しようとして働いた結果として
生まれているものです。
その働きが少し固定されてしまったときに、
ふらつきや首肩こりとして感じられることがあります。
身体の感覚を整えていくことで
より楽なバランスを見つけていくことができる場合もあります。
武蔵浦和の鍼灸院 Yeji浦和 では、
首や肩だけを見るのではなく、
身体全体のバランスを確認しながら施術を行っています。
めまいや首肩の緊張が続いている場合、
身体の感覚の使い方や姿勢のバランスが
関係していることもあります。
施術について詳しくは、
施術案内ページをご覧ください。
よくある質問
めまいがあると肩こりは起こりやすいですか?
めまいのある方で首や肩のこりを感じる方は少なくありません。
これは単純な筋肉の問題ではなく、
身体がバランスを保とうとして
首や肩の筋肉を使っていることが関係している可能性があります。
パソコン作業でめまいが悪化することはありますか?
視覚への依存が強くなっている場合、
長時間の画面作業が負担になることがあります。
めまいのある方でパソコン作業がつらく感じる場合には、
姿勢や作業時間の調整が役立つことがあります。
首こりはめまいの原因になりますか?
首の筋肉や関節には
頭の位置を感知する感覚受容器があります。
そのため、首の状態が
バランス感覚に影響することもあると考えられています。
ただし、めまいの原因はさまざまであり、
個々の状態によって異なります。
※本記事は一般的な身体の仕組みについて解説したものであり、特定の診断や治療を目的としたものではありません。症状が続く場合には、医療機関での診察を受けることをおすすめします。
References
Peterka RJ.
Sensorimotor integration in human postural control.
J Neurophysiol. 2002.
Lacour M, et al.
Interaction between vestibular compensation mechanisms and vestibular rehabilitation therapy: 10 recommendations for optimal functional recovery.
FrontNeurol. 2015.
Lacour M, et al.
Vestibular compensation: the neuro-otologist’s best friend.
J Neurol. 2016.
Sung YH
Suboccipital muscles, forward head posture, and cervicogenic dizziness.
Medicina. 2022.
Wittenberg, et al. 2017
Neuroimaging of human balance control: a systematic review.
Frontiers in Human Neuroscience. 2017.
Cousins S, et al.
Visual dependence and dizziness.
Plos one. 2014.
Mehnert J, et al.
Functional brainstem representations of the human trigeminal cervical complex.
Cephalalgia. 2023.
この記事を書いた人
代表カヤマ
鍼灸師/医学博士
慶應義塾大学病院 漢方医学センターでの臨床経験をもとに、
慢性的な肩こりや頭痛、食いしばり、自律神経の不調など、
身体全体のバランスから整える施術を行っています。
武蔵浦和の鍼灸院 Yeji浦和 代表
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