「良くなったと思っても、また戻る」
片頭痛では、
・しばらく調子が良くてもまた発作が出る
・薬で抑えても繰り返してしまう
・頭痛がない日も、どこかすっきりしない
といった状態が続くことがあります。
このとき身体の中では、
単なる一時的な不調ではなく、
“繰り返しやすい状態”そのものが作られている
可能性があります。
片頭痛は「一回ごとに終わるもの」ではない
一般的には、片頭痛は
「発作が起きて、治まるもの」
と考えられています。
しかし実際には、
発作がないときにも神経系の状態は完全には元に戻っていないことがあります(Dodick, 2018)。
その結果、
・わずかな刺激でも反応しやすい
・疲れやすい
・首や肩の違和感が続く
といった状態が残り、
次の発作につながりやすくなります。
感作とは何か
この背景にあるのが、
感作(sensitization)
と呼ばれる状態です。
感作とは、
神経が刺激に対して過敏になることです(Woolf, 2011)。
本来であれば問題にならない程度の刺激でも、
・強く感じる
・痛みとして認識される
ようになります。
中枢感作と三叉神経系
特に重要なのが、
脳や脊髄レベルで起こる中枢感作です。
片頭痛では、この感作は
三叉神経系(顔や頭部の感覚を担う神経)を中心に起こります(Goadsby et al., 2017)。
さらに、片頭痛では
刺激に対する閾値が低下し、
光や音などの感覚に対して過敏に反応しやすくなることが知られています(Blumenfeld et al., 2021)。
首・顎と頭痛がつながる理由
三叉神経は、
・頭部の感覚
・顎や口の感覚
・首からの情報
といった入力を、脳幹で統合しています。
この統合領域は
三叉神経頸部複合体(TCC*と呼ばれ、
首や顎の状態が頭痛の感じ方に影響する背景となっています(Mehnert et al., 2023)。
繰り返し刺激が入ることで、
神経回路そのものの反応性が変わり、
「感じ方の基準」が書き換わっていきます。
感作によって起こる変化
この状態では、
・光や音に敏感になる
・首や顎の刺激で頭痛が出る
・触れただけで痛みを感じる
といった変化が起こります。
痛みは「記憶される」
さらに、感作が進むと、
痛みは単なる反応ではなく、
“記憶”として残るようになります。
神経には、
繰り返し使われる回路を強化する性質があります。
これを神経可塑性と呼びます(Woolf, 2011)。
片頭痛では、
・痛みの経験
・不快な感覚
・身体の緊張
が繰り返されることで、
その回路が強化され、
痛みを起こしやすい状態が固定されていきます。
「発作がない日」も重要
この状態では、
頭痛が出ていない日にも、
・なんとなく頭が重い
・光がまぶしい
・集中しにくい
といった変化が残ることがあります。
つまり片頭痛は、
発作と発作の間も含めて進行している状態
と言えます。
なぜ慢性化するのか
慢性化の流れを整理すると、
① 刺激が繰り返される
(首・顎・感覚・ストレスなど)
↓
② 三叉神経系と頸部(TCC)が興奮しやすくなる
↓
③ 感作が起こる
↓
④ 痛みの記憶が強化される
↓
⑤ さらに刺激に弱くなる
という循環が起こります。
これは「壊れている」のではない
ここで重要なのは、
この状態は
身体が壊れているわけではない
ということです。
むしろ、
・危険を記憶する
・刺激に敏感になる
という、本来は生存のための仕組みが
強く働いている状態です。
現代環境とのミスマッチ
この仕組みは本来、
・ケガ
・毒
・外敵
といった明確な危険に対して働くものでした。
しかし現代では、
・光や音
・情報過多
・長時間の同一姿勢
・精神的ストレス
といった刺激にも反応してしまいます。
慢性化は「ネットワークの問題」
このように見ると慢性化は、
・頭だけの問題でも
・血管の問題でもなく
三叉神経(頭部)・頸部・顎・感覚入力が統合された
神経ネットワーク全体の状態
として理解することができます。
武蔵浦和で片頭痛の慢性化を見直したい方へ
さいたま市・武蔵浦和の鍼灸院 Yeji浦和では、
・発作だけでなく
・発作のない日の状態
・首や顎の緊張
・感覚の過敏さ
といった要素を含めて、
身体全体の流れとして状態を整理していきます。
References
Dodick DW.
A Phase-by-Phase Review of Migraine Pathophysiology. Headache. 2018;58(S1):4–16.
https://doi.org/10.1111/head.13300
Woolf CJ.
Central sensitization: Implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2–15.
https://doi.org/10.1016/j.pain.2010.09.030
Goadsby PJ, Holland PR, Martins-Oliveira M, et al.
Migraine: a disorder of sensory processing. Physiological Reviews. 2017;97(2):553–622.
https://doi.org/10.1152/physrev.00034.2015
Blumenfeld AM, et al.
Disability, HRQoL and resource use among chronic and episodic migraineurs. Neurology and Therapy. 2021.
https://doi.org/10.1177/0333102410381145
Mehnert J, et al.
Functional brainstem representations of the human trigeminal cervical complex. Cephalalgia. 2023.
https://doi.org/10.1177/03331024231174862
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療を目的としたものではありません。症状が続く場合は医療機関での適切な評価を受けることをおすすめします。
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この記事を書いた人
代表カヤマ
鍼灸師/医学博士
慶應義塾大学病院 漢方医学センターでの臨床経験をもとに、
慢性的な肩こりや頭痛、食いしばり、自律神経の不調など、
身体全体のバランスから整える施術を行っています。
武蔵浦和の鍼灸院 Yeji浦和 代表
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