電車を降りても、まだ揺れている感じがする
電車から降りたのに、まだ身体が揺れているような感じがする。
エレベーターの上下が苦手で、降りたあともしばらくふわっとする。
車に乗るとすぐに気持ち悪くなる。
人混みや大きな店舗を歩いているだけで、目や頭が疲れてくる。
こうした「揺れ」や「動き」へのつらさと、片頭痛が一緒にある方がいます。
片頭痛とめまいが繰り返し重なる状態の一つに、前庭性片頭痛と呼ばれるものがあります。
名前だけを見ると難しそうですが、ここでは病名を覚えることより、
「なぜ、ちょっとした揺れや動きがこんなにつらく感じられるのか」
を考えてみます。
「三半規管が弱い」だけでは説明できない
乗り物酔いやめまいがあると、
「三半規管が弱いのかな」
と思うことがあります。
けれど、私たちが身体の動きを感じる仕組みは、三半規管だけではありません。
耳の奥にある前庭器官では、
- 頭が回転したこと
- 前後や左右に動いたこと
- 上下に動いたこと
- 身体が傾いたこと
- 重力に対して頭がどちらを向いているか
といった、少しずつ違う情報を受け取っています。
そして脳は、それらを別々の情報のまま扱うのではなく、組み合わせながら、
「今、自分はどちらへ、どのくらい動いているのか」
を判断しています。
つまり、めまいや乗り物酔いを考えるときには、耳のセンサーそのものだけでなく、入ってきた動きの情報をどうまとめているかという視点も必要になります。
私たちは、いくつもの動きをまとめて感じている
たとえばエレベーターに乗ると、
動き始める。
加速する。
一定の速さで動く。
減速する。
止まる。
という変化が、短い時間に続けて起こります。
車なら、さらに、
曲がる。
坂を上る。
ブレーキをかける。
路面の揺れを受ける。
といった動きが重なります。
身体の中では、それぞれの動きについて別々の情報が入ってきます。
私たちは普段、それを意識することなく一つにまとめ、
「いま車が曲がった」
「いま身体が傾いた」
と感じています。
この複数の動きの情報を一つにまとめる働きが、今回の記事のポイントです。
前庭性片頭痛では、「動きのまとめ方」に特徴があることがある
前庭性片頭痛の研究では、興味深いことがわかっています。
耳の中には、回転を感じる仕組みと、重力や直線的な動きを感じる仕組みがあります。
それぞれの情報を比較的単独で使う条件では、大きな違いがみられない一方で、複数の前庭情報を組み合わせて身体の傾きを感じる場面では、前庭性片頭痛の方がより小さな動きを感じ取ることが報告されています(King et al., 2019)。
言い換えると、
耳のセンサー全部が単純に「敏感」なのではなく、
いくつかの動きの情報をまとめて、自分の動きを判断する過程に特徴がある可能性がある
ということです。
これは、「なぜ電車やエレベーターのちょっとした揺れがこんなに気になるのだろう」と考えるときの、一つの手がかりになります。
車・電車・エレベーターがつらいのも、この視点から考えてみる
乗り物では、身体に一種類の動きだけが入るわけではありません。
前後、左右、上下、回転、傾き。
さまざまな情報が次々に入ってきます。
そのため、動きの情報をまとめる過程に特徴がある場合には、日常では問題にならない程度の揺れでも、
- ふわっとする
- 身体が不安定に感じる
- 気持ち悪くなる
- 乗り物に長く乗っていられない
といったつらさにつながることがあります。
実際、前庭性片頭痛を対象にした研究では、乗り物酔いのしやすさが高いことも報告されています(King et al., 2019)。
もちろん、
「動きの情報をまとめる働きが変わるから、乗り物酔いが起こる」
と一本の原因で説明できるわけではありません。
ただ、
乗り物酔い=三半規管が弱い
だけではなく、
自分の動きをどう感じ取っているか
という見方を加えると、少し理解しやすくなります。
自分の「揺れ方」を少し観察してみる
めまいについて相談するとき、
「めまいがします」
だけでは、実はかなり幅があります。
たとえば、
- ぐるぐる回る感じ
- ふわふわする感じ
- 床が揺れる感じ
- 身体が傾く感じ
- 頭を動かすと気持ち悪い
- 車や電車だけでつらい
- 人混みや流れる景色が苦手
では、同じ「めまい」でもかなり違います。
さらに、
- 何秒・何分・何時間くらい続くか
- 頭痛の前・同時・あと、いつ起こるか
- 吐き気があるか
- 光や音もつらくなるか
- 頭痛がないときにも起こるか
も大切な情報です。
前庭性片頭痛では、めまいと頭痛が毎回同時に起こるとは限りません。
だから、
「頭痛がないときのめまいだから、片頭痛とは無関係」
と自分で決める必要もありません。
逆に、めまいの原因がすべて片頭痛というわけでもありません。
病名を自分で決めるためではなく、自分に起きている「揺れ方」を伝えやすくするために記録しておくと役立ちます。
Yejiで確認していること
Yeji浦和では、めまいがあるときに、
「自律神経ですね」
「首が原因ですね」
と一つに決めることはしません。
まず、
- どんな感じのめまいなのか
- どのくらい続くのか
- 頭を動かすと変わるのか
- 車・電車・エレベーターでつらくなるのか
- 人混みや景色の動きで変わるのか
- 頭痛とはどのような順番で起こるのか
- 吐き気、光、音のつらさがあるのか
- これまで耳鼻科や頭痛外来などでどのような評価を受けているのか
を確認します。
そのうえで、首の動きや身体の状態も見ていきます。
首のつらさとめまいが一緒にある方もいますが、首の状態だけからめまいの原因を決めることはしません。
来院時の状態を確認しながら施術方針を考え、症状の特徴やこれまでの経過によっては、耳鼻科や頭痛専門外来など医療機関での評価もあわせてご案内します。
まとめ
片頭痛と一緒に、めまいや乗り物酔いが起こることがあります。
そのとき、
「耳が弱い」
「三半規管が弱い」
だけでは説明しきれない場合があります。
私たちは、耳の中に入るさまざまな動きの情報を組み合わせながら、
「自分はいま、どちらへ、どのくらい動いているのか」
を感じています。
前庭性片頭痛では、こうした「動きの感じ方」「動きのまとめ方」に特徴がある可能性が示されています。
だからこそ、めまいを考えるときは、
- どんな動きがつらいのか
- どんな揺れ方をするのか
- 頭痛といつ重なるのか
を少し具体的に見ていくと、自分の症状を整理しやすくなります。
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来院を検討されている方へ
片頭痛とめまい、乗り物酔いが重なっているときは、「めまいがある」というだけでなく、どのような動きで症状が出るのか、頭痛との時間関係、吐き気や光・音のつらさなどを一緒に確認すると、状態を整理しやすくなることがあります。
Yeji浦和では、めまいを耳・首・自律神経のどれか一つに決めつけず、これまでの経過や医療機関での評価も確認しながら施術方針を考えています。
安全案内
突然始まった強いめまい、立てない・歩けないほどのふらつき、手足の力が入りにくい・しびれる、話しにくい、ものが二重に見えるなどの神経症状、突然の非常に強い頭痛を伴う場合は、施術より医療機関での評価を優先してください。
また、初めて経験する強いめまいや、これまでと明らかに異なる症状がある場合も、自己判断せず医療機関へご相談ください。
緊急性が高いと感じる場合は、救急要請を検討してください。
本記事は一般的な医学・身体理解のための情報提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。
References
King S, Priesol AJ, Davidi SE, Merfeld DM, Ehtemam F, Lewis RF.
Self-motion perception is sensitized in vestibular migraine: pathophysiologic and clinical implications.
Scientific Reports. 2019;9:14323.


